絵本 森の雨 (Online book for free)

 

 

ここ数日、森は雨ばかりで

鳥は飛ぶことを忘れそうになってる

お腹もだいぶすいてる

それでも、今日も雨が降る

そんな日の小さなお話。

 

雨 (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork
雨 (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork

 

 

木々の緑が黒々と鳥を呼ぶ

雨に濡れるから鳥はそこから動きたくない

 

緑は黒々と鳥を呼ぶ

鳥はやっぱり動かない

鳥は今年生まれたばかりで

どこまで飛べるか知らなくて

緑の誘いも初めてで

 

雨の下、緑はますます黒くなる

鳥はじっと動かない

Black Moons (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork
Black Moons (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork

 

緑が黒々、鳥を呼ぶ

 

それでも鳥は動かない

 

緑は一瞬、不審に思う

この前の鳥はすぐ溶けたのに…

 

あ!!

緑が時間を手放した隙に

雨が緑に流れ込み

緑の時間は水浸し

緑が雨に溶けてゆく

緑が雨に溶けてゆく

 

 

鳥はぼんやりそれを眺めている

鳥の頭はおもくて眠い

 

Envelope curves (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork
Envelope curves (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork

 

乾いた時間はいらないかい?

 

誰かが歌っているのがきこえる

 

 

乾いた時間はいらないかい?

今日のリズムを白いまま

のせる時間が要るだろう?

 

鳥はうつろにつづきを歌う

 

乾いた時間を手に入れて

さあ、その中に入ってごらん

そこに息づく若いオニシダ

土のリズムが静かに浮かぶ

 

乾いた時間を手に入れて

その足元を見てごらん

そこから湧き立つ草のつる

空のリズムが宙を舞う

 

 

歌っていると

何かがこっちに近づいてくる

 

 

見れば、さっきの緑を溶かした雨水がこちらに流れてくる

あの鳥はなぜ溶けない?溶けた緑の黒い声

 

鳥は気味が悪くなって

逃げようとしたけれど、うまくからだが動かない

緑の水がどんどん近づいてくる

どんどん

 

とうとう、鳥のからだは緑の水にのまれてしまった

 

 

 

青いにおいがする

からだがきしむ

脊椎のひとつひとつがぎゅうぎゅういう

のどが渇く

舌が出る

 

Untitled (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork
Untitled (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork

気が付くと鳥はへびになっていた

立派なアオダイショウだった

夏の暑い夜で、もう、どうにも腹がへって

でも、知ってる

あのひさしの下に鳥の巣がある

毎日ピーピー鳴いているかわいいのが5羽

 

おとといの晩から1羽ずつ呑んでは吐いて

呑んでは吐いて

どうして吐くのかって?

分からない

呑み込めない

でも、呑みたい

もう、アディクションってやつだ

 

今日の夜、また巣にのぼる

あと2羽

まず1羽を呑んで吐いた

それから最後の…

最期の…

 

最後の1羽が呑めない

なぜって

その鳥は闇の中へ巣立ってしまって

 

闇に消える鳥をぼんやりと

へびはただぼんやりと

White(2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork
White(2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork

 

うつら、うつら

 

うつら、うつら

うつら、うつら

 

うつら、うつら

うつら、うつら

 

 

Envelope curves II (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork
Envelope curves II (2016) Fuku Ikeda, Graphic artwork

 

 

夜が明ける

 

雨があがった

 

鳥はようやく目を醒まして

みんなの朝の声を聴いて

それから、飛んでいった